A1 このような相談は、今でも少なくありません。4世、5世が誕生している現在でも、在日同胞の婚姻届をすんなり受理しない役所があります。係りの人の不勉強であるのはまちがいなく、彼女・彼ら自身が「在日」そのものの存在を知らずに育っているのです。
説明するまでもなく、戸籍はかつての日本植民地支配時代に導入されたもので、現在では日本、韓国、台湾に固有の制度です。在日同胞の中には「朝鮮表示」であれ「韓国表示」であれ、本籍地に戸籍を持たない人が多く、そのため戸籍を求めること自体が無理な話です。
前回の本蘭でも説明したとおり、婚姻届の提出の際、戸籍謄本や婚姻要件具備証明書が求められるのは、@婚姻年齢に達しているか、A重婚ではないか、B性別など、婚姻成立の要件を、本国法上当事者が具備しているかどうかを形式的に審査するためです。ですから、これらの婚姻成立の要件を具備していることを明らかにすれば、婚姻届は受理されます。相談者は、「本国法上、婚姻要件に障害がない」旨の「申述書」を作成して提出すれば、それで婚姻届は受理されます(※役所によっては「申述書」の様式が備置されていることもあるので、係りの人に確認してください)。
これについては、「昭和30年2月9日付民事局長通達」(民事甲第245号通達)が出されています。今後もこの相談事例のように、婚姻届の提出に際し戸籍謄本等を求められるようなことがあれば、この民事局長通達があることを係りの人に伝えてください。市区町村役場の係りの人がそれでも理解を示さないようであれば、同胞法律・生活センターにご連絡ください。センター事務局から直接係りの人に説明することも可能なのです。
Q2 同胞同士のカップルです。待望の子が生まれ、早速『Q』という漢字を用いて命名し、出生届を提出したところ、「人名漢字の範囲にはない漢字が含まれているのでこのままでは出生届を受理できません。別の漢字に変えてください」と言われました。よくよく考えて付けた名前なのでその漢字でないと困ります。かと言って、出生届が出せないのも困るし…変更せざるをえないのでしょうか?
A2 変更する必要はありません。人名漢字の範囲外の難しい漢字で出生届を出すことはできます。
日本人の場合、名前に用いる漢字は常用漢字や人名用漢字の範囲内のものに限られています。この人名用漢字とは、社会生活を営む上で、複雑、難解な漢字は本人はもとより関係者にも不便や支障を生じさせるため制限すべきだとして、常用漢字のほかに定められているものです。
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センター相談員紹介−古川健三さん(弁護士) |
| センターの開設当初より相談員をしています。
在日の方の相談に接してみて思うのは、在日の方の場合、非常に狭いコミュニティー内でのトラブルが少なくないので、その意味での難しさがあると思います。 |
新聞でも報道されたのでご存じの方も多いでしょうが、今年の秋にはその範囲がかなり拡大され、名前に用いることのできる漢字が488字増えました。また、削除された漢字もあります。
しかしながら外国人の場合はこの限りではありません。とりわけ朝鮮半島や中国・台湾などのように、本国法上姓名を漢字で表記するような場合、日本人に対しては適用される常用漢字や人名用漢字の範囲などは関係ありません(1981年法務省民時局通達第5537号)。ですから、在日同胞の場合、この範囲外の難しい漢字を使った名まえでも出生届は受理されます。
やはり市区町村役場の係りの人の不勉強で、この相談のようにすんなりと出生届を受理してくれない場合は、このような通達があることをきちんと伝えてください。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長)
[朝鮮新報 2004.11.30]
Q 日本人女性との結婚を考えています。日本人との結婚に複雑な感情を持っている両親から国籍を私と同じ朝鮮にし、姓も私と同じ「朴」にするなら、という条件が出されました。
こういったことは現在、可能なのでしょうか? また婚姻届をするにあたって注意しておくべきようなことはあるのでしょうか?
A まず婚姻届を出すにあたっての注意事項ですが、結婚する男女がそれぞれの本国法での婚姻要件をそなえているかということに留意すべきです。重婚でないかとか婚姻可能年齢に達しているかといったことです。ちなみに共和国法、韓国法、日本法のどれもが重婚を禁止していますので、当然結婚する男女の何れかが重婚だと結婚出来ません。また婚姻可能年齢については日本と韓国が男性18歳以上、女性16歳以上であるのに対し、共和国は男性18歳以上、女性17歳以上となっています。
婚姻届時にはこういったことを確認するために「婚姻届と一緒に戸籍謄本も出して下さい」と役所で言われることが少なからずあります。しかし、外国人登録上の国籍欄が「朝鮮」表示の同胞の中で韓国の戸籍登録している人はあまりいないのはご存じの通りです。こんな場合も本国官憲発行の証明書を添付することが困難な状況にあること、婚姻届を提出するにつき本国法上なんら問題がないことを記した申述書を代わりに提出すれば大丈夫です。共和国の国籍取得は可能
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センター相談員紹介−蛭田孝雪さん(弁護士) |
| 同胞法律・生活センターで在日の皆さんから、家族やお金に関するものや、不動産や相続など幅広く相談を受けています。日本人の相談ととりわけ異なるところはなく、誰にでも起こり得ることにやはり在日の方も悩んでおられるのだなと思っています。
しかし、在日同士のトラブルの場合、一方的に依頼者の立場からではなく、なんとかうまく調和できないかと悩むところです。 |
国籍については朝鮮民主主義人民共和国国籍を取得できる可能性は十分にあります。共和国の国籍法では共和国籍の者と婚姻した者が自動的に共和国の国籍を取得することにはなっていません。しかし、同国国籍法第6条では「無国籍者または外国公民は、請願により、朝鮮民主主義人民共和国国籍を取得することができる」としています。実際、この条文に基づき在日同胞と結婚した日本人配偶者が請願をした結果、共和国国籍を取得したケースがここ数年間でも複数あることからも、共和国政府はこういったケースでは基本的には請願があれば取得を認めているようです。
ただし、共和国国籍を取得しても日本国籍を喪失できない(必然的に外国人登録をされることも、外登証を持つこともない)現状にあることに留意しておく必要があります。日本政府が、国交がない、国家承認をしていないということを理由に、共和国国籍を取得したことを証明する書類を提示しても、それを承認し、そのことによる日本国籍の喪失を認めないからです。これは国交正常化がなされれば当然解決する問題であることはもちろんですが、国交正常化される前においても共和国国籍の承認がなされてしかるべきであることは言うまでもありません。ただ、日本政府がどう扱うかにかかわらず、共和国政府が国籍を付与し、同国の国民として扱うことに変わりはありません。
南は居住要件が障害に
以上、共和国を本国とする同胞との前提で書きましたが、参考までに韓国国籍の取得についても簡単に述べますと、1998年6月14日の改正国籍法施行以後は韓国国民の配偶者になったとしても婚姻した状態での2年以上(婚姻後3年以上経過した夫婦の場合は1年以上)の韓国居住が要件となっており、多くの場合、この要件を満たすことは難しいと言えるでしょう。
姓については日本国籍のままでも婚姻後6カ月以内なら市役所などの町役場で、それを過ぎても家庭裁判所の許可を貰う方法で夫と同じ「朴」姓に変更することができます。また共和国国籍取得の請願をするにおいても姓については「朴」姓を希望すると明記しておけば良いでしょう。(金東鶴、NPO法人同胞法律・生活センター)
[朝鮮新報 2004.11.22]
日本が少子高齢社会と言われるようになって久しいこの頃、私たちの暮らしの周辺でもこれを実感するようなさまざまな出来事や問題が目立つようになっています。他方、現代は晩婚化、未婚化の時代とも言われています。この背景には、とりわけ「少子化」問題が単に女性が子どもを産まなくなったことに原因があるのではなく、子を産む親世代の人口(男女を含む)の縮小と子の生み方の変化が大きく影響しているからだと言われています。このうち子の生み方が変化したことの要因が結婚の仕方が変わったこと、すなわち晩婚化、未婚化なのです。
この「晩婚」「未婚」という言葉。かつては女性にたいしてよく使われ、そこには多少非難めいたニュアンスも含まれていたように思われます。何を隠そう、筆者自身も周囲からさんざん「いつ結婚するの? する気あるの?」などと言われ、そのつど「あんたに何の関係や?」と心の中で思ったものです。ところが最近は、男性も含めて使われます。
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センター相談員紹介−黄正基さん(住まいサポート専門相談員) |
| 嫌な思いせず希望の物件を
東京・新宿歌舞伎町で不動産業を営んでいます。外国人が非常に多い地域なので、さまざまな国の人たちの住まい探しを手伝うことが多くあります。家主や管理会社と交渉する過程で、外国人への偏見、とりわけコリアンをはじめアジア人、黒人などに対する非常に根深い偏見にぶつかります。その中で数世代を経て日本に暮らす私たち在日同胞に対しても、他の外国人とひと括りにされて同様の偏見を持たれていることが少なくありません。しかし、きちんと説明してあげることで、理解してくれる家主もいます。進学や就職、あるいは結婚などで、東京近郊に住まいを探そうとしている同胞のみなさん、同胞法律・生活センターまでご連絡ください。嫌な思いをせずにスムーズに希望通りの物件が見つかるよう、お手伝いします。 |
私たち在日同胞も日本社会のこのような現象とは無関係ではないでしょう。親戚や友人など周囲をみても、世代が若くなるにつれて初婚年齢が高くなっていたり、あるいは未婚者数が多くなっていると思います。
しかしながら私たち在日同胞の場合、女性・男性の婚姻に関連したこのような傾向とは別に、さらに「国際結婚」という問題があります。このいずれの問題もあわせて、在日同胞社会の存続にも関わってくる非常に重要な問題と言えます。
在日同胞と日本人の結婚は年々増加傾向にあり、いまや同胞同士の婚姻数をはるかに上回るようにもなっています(*厚生労働省『人口動態統計』2004.3によると、同胞同士の婚姻件数は943件で、これに対し同胞と日本人との婚姻件数は7732件、同胞と日本人以外の外国人との婚姻件数は172件となっている)。
そのため、同胞法律・生活センターにも国際結婚に起因する日本人配偶者やその夫婦間に出生した子どもの国籍に関する相談がたくさん寄せられています。かつてはこのような相談は、両親から猛反対の末に、日本人の妻と生まれてくる子は必ず民族の国籍を取得させるという条件で結婚した夫婦や、その親からのものが圧倒的多数を占めていました。ですからその内容も、日本人配偶者やあるいは生まれた子に民族の国籍を取得させるにはどうすればよいか、日本国籍の離脱手続きに関するものが多かったようです。
しかし最近では、子が民族の国籍を取得できる道はあるのか(すなわち、日本との重国籍なのかどうかの確認)と、国籍の選択は将来子に委ねるとしても、子に民族の姓を名乗らせることはできるのか、日本国籍になっている子が自分と同じ朝鮮籍を合わせ持っていることは何で証明できるのかというような相談が非常に多くなっています。相談者はもっぱら若い在日3世で、1世や2世とは異なり高い教育水準と多様な価値観、ライフスタイルに裏打ちされ、相談内容にも民族と国籍を分けて捉えようとする傾向が反映されていると言えます
また他方では、日本人以外の外国人と婚姻する同胞も年々増加傾向にあるようです。中国朝鮮族の同胞と結婚するケースも増えてきているようですが、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、パキスタン、中国などと相手の国籍はさまざまで、まさにその呼び名のとおり国際結婚をする同胞も増えています。そのため相手の本国の法律によっては婚姻の方式も異なり、また宗教上の儀式が必要であったりするなど、婚姻の手続きが非常に複雑になることがあります。それだけでなく相手の日本における在留資格の取得手続きや、生まれてくる子の国籍がどうなるのか、また日本で出産しなかった場合(妻が本国で里帰り出産した場合)子の日本での在留資格や国籍などはどうなるのか…などなど、まだまだ歴史の浅い同胞法律・生活センターですが、ほんの2、3年前には考えられなかった相談が増えており、同胞社会が実に多様化していることを実感しています。
次回からは、このような同胞の婚姻にまつわる問題を相談事例形式で紹介していきます。(金静寅、NPO法人同胞法律・生活センター事務局長)
[朝鮮新報 2004.11.9]